私は、福引が好きだ。
あるwebサービスを利用して、私は毎日福引を回している。
それは、以下のようなシステムである。
- 1日につき1回、福引を回す権利が与えられる
- 福引の景品として入手可能な「ポイントチケット」を消費し、何らかのサービスを受けることができる
- 「ポイントチケット」を一定量消費することで、新たに福引を回す権利が得られる
この他に「割引券」なるものが存在するが、私は利用したことが無い。
- 「ポイントチケット」と同様に、「割引券」も福引の景品である
- 「ポイントチケット」は、課金により購入することも可能である
- 「割引券」を利用することで、「ポイントチケット」の値段を一定の割合で下げることができる
福引を回し続けていると、ポイントチケットだけでなく割引券も手に入る。
溜まり行く割引券を見て、私はいつも思う。
「これを使えば、どれほどたくさん福引を回せるだろうか。」
課金の仕方を知らない私には、ただ妄想することしかできなかった。
太郎君は、近所の商店街に福引を回しにやってきました。
商店街の福引は、以下のようなシステムになっています。
- 「福引券」は枚円で買うことができます。
- 「福引券」枚につき回、福引を回すことができます。
- 福引を回回すと、の確率で「割引券」がもらえます。
- 「割引券」を使うと、「福引券」の値段を「割引券」枚につき半分ずつ下げることができます。
太郎君は、円玉枚と割引券枚を持っていました。
太郎君は、円玉枚と割引券枚を出してこう言いました。
「福引券をください。」
「はいよ、割引券枚だから枚当たり円、円だから枚だね。」
福引券枚を受け取った太郎君は早速福引を回し、枚の割引券を手に入れました。
次の日、太郎君は近所の商店街に福引を回しにやってきました。
太郎君は、円玉枚と割引券枚を出してこう言いました。
「福引券をください。」
「はいよ、割引券枚だから枚当たり円、円だから枚だね。」
福引券枚を受け取った太郎君は早速福引を回し、枚の割引券を手に入れました。
家に帰った太郎君は考えました。
「割引券の獲得確率はであるから、福引券を枚消費して枚獲得という結果は確率的に妥当である。また、前回枚の割引券を消費して枚の割引券を獲得し、今回枚で枚獲得したのだから、次回以降割引券の枚数が更に増加する可能性があると考えられる。」
次の日、太郎君は近所の商店街に福引を回しにやってきました。
太郎君は、円玉枚と割引券枚を出してこう言いました。
「福引券をください。」
「はいよ、割引券枚だから枚当たり円、円だから枚だね。」
福引券枚を受け取った太郎君は早速福引を回し、枚の割引券を手に入れました。
次の日、太郎君は近所の商店街に福引を回しにやってきました。
太郎君は、円玉枚と割引券枚を出してこう言いました。
「福引券をください。」
「はいよ、割引券枚だから枚当たり円、円だから枚だね。」
福引券およそ澗(かん)枚を受け取った太郎君は早速福引を回し、約澗枚の割引券を手に入れました。
家に帰った太郎君は、澗という数がどれぐらい大きいのか気になったので調べてみることにしました。
太陽の質量はおよそです。福引券枚の質量をとすると、澗枚の質量はぐらいになり、太陽個分に相当することが分かりました。
また、観測可能な宇宙全体の質量は約であり、これと比べるとは非常に小さい数です。
次の日、太郎君は近所の商店街に福引を回しにやってきました。
太郎君は、円玉枚と割引券澗枚を出してこう言いました。
「福引券をください。」
「はいよ、割引券澗枚だから枚当たり円、円だからだいたい枚だね。」
福引券約枚を受け取った太郎君は早速福引を回し、約枚の割引券を手に入れました。
家に帰った太郎君は、手に入れた割引券が本当に枚あるかどうか確かめるため、枚ずつ並べて数え始めました。
数えている途中、太郎君は目の前でブラックホールが生成されるのを見ました。
宇宙に存在するすべての粒子は、トンネル効果によりブラックホールに変化する可能性があります。
そして、宇宙に存在するすべての粒子がブラックホールになるまでにかかる時間はから(単位は何でもいい)だと考えられています。
ということは、太郎君が福引券を数えている間に宇宙はブラックホールだらけになってしまうかもしれません。
また、広い宇宙のどこかには「観測可能な宇宙と全く同じ粒子配列を持つ空間」が存在する可能性があります。
そのような空間に辿り着くための平均移動距離は程度と見積もられていて、割引券を並べ続けても届かなさそうです。
次の日、太郎君は近所の商店街に福引を回しにやってきました。
太郎君は、円玉枚と割引券枚を出してこう言いました。
「福引券をください。」
「はいよ、割引券枚だから枚当たり円、円だからだいたい枚だね。」
福引券約枚を受け取った太郎君は早速福引を回し、約枚の割引券を手に入れました。
家に帰った太郎君は、という数がどれぐらい大きいのか気になったので調べてみることにしました。
「多元宇宙論」という理論では、平行宇宙は全部で個程度存在すると考えられるそうです。
1枚の割引券を見つめ、太郎君は想像を膨らませ始めました。
「もしこれが、個の宇宙だとしたら。」
「この中に空間があって、銀河があって、星があって、その中のつに僕がいて...」
太郎君はそこから何も考えられず、膨らんだ想像は泡のようにはじけて消えてしまいました。
一方、「宇宙論で使われた最大の数」として知られている数は約だそうです。
これは「すべての多重宇宙の質量を1個のブラックホールに潰して箱に入れ、そのブラックホールが蒸発した後にまたブラックホールが生成されるまでにかかる時間」として算出された数値です。
太郎君には何が何だか全くわかりませんでした。
そして、「よくわからないけど、すっごく大きい数なんだなぁ。」と無理矢理自分を納得させ、思考を止めてしまいました。
次の日、太郎君は近所の商店街に福引を回しにやってきました。
太郎君は、円玉枚と割引券枚を出してこう言いました。
「福引券をください。」
「はいよ、割引券枚だから枚当たり円、円だからだいたい枚だね。」
福引券約枚を受け取った太郎君は早速福引を回しに行きました。
福引会場に向かう途中、太郎君は考えました。
「明日はどれぐらいたくさん福引を回せるだろうか。今日は福引が終わるまでどれくらいかかるだろうか。」
福引会場のすぐそばで、太郎君は何かを箱に入れて立ち去る人を見つけました。
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太郎君は、この世の終わりのような気分で帰路につきました。
円玉を使い切ってしまったことに、ようやく気付いたのでした。
「ようボウズ、何暗い顔してんだ?」
太郎君は、見知らぬ男に声をかけられました。
「お金が無くなってしまったんです。」
「若いのに大変だな。ところで、その紙切れは何だ?」
「割引券です。」
「ほう。じゃあその割引券、俺が枚円で買い取ってやるよ。」
太郎君は枚の割引券を手元に残し、残りをすべて売りました。
突然円という大金を手に入れた太郎君は大喜びしました。
「これでまた、福引が回せる!」
「はいよ、割引券枚だから枚当たり円、円だから枚だね。」
「はいよ、割引券枚だから枚当たり円、円だから枚だね。」
「はいよ、割引券枚だから枚当たり円、円だから枚だね。」
「はいよ、割引券枚だから枚当たり円、円だから枚だね。」
「はいよ、割引券澗枚だから枚当たり円、円だからだいたい枚だね。」
「はいよ、割引券枚だから枚当たり円、円だからだいたい枚だね。」
「はいよ、割引券枚だから枚当たり円、円だからだいたい枚だね。」
「はいよ、割引券枚だから枚当たり円、円だからだいたい枚だね。」
「はいよ、割引券枚だから枚当たり円、円だからだいたい枚だね。」
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「はいよ、割引券枚だから枚当たり円、円だからだいたい枚だね。」
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「ようボウズ、何暗い顔してんだ?」