※この記事は「オモコロのノリで数学の話をしたら面白くなるか?」という疑問の検証を目的として作成されています。
こんにちは、108Hassiumです。
突然ですが、皆さんは冪乗をご存知でしょうか。
漢字で書くとわかりにくいかもしれませんが、
↑これのことです。
さて、実は私は冪乗という演算に関して思っていることがあります。
それがこちら。
多分「こいつ何言ってんだ」ってなったと思うので説明します。
まず、冪乗は掛け算の繰り返し、掛け算は足し算の繰り返しです。
これらの3つの演算の性質を比べてみます。
お分かりいただけたでしょうか。
足し算と掛け算で成り立ってた性質が、冪乗では成り立ってないんです。
あと最初のという式。
「僕は大丈夫ですけど?」みたいな顔してますが、足し算のときは0、掛け算で1と来て次は2が出てくると思いきや、なんとまさかの1です。
美しくない!!
新しい演算を作ろう
というわけで、数学的に美しい新しい演算を作ってみようと思います。
「工作記事のノリで数学的概念を作るなよ」と思うかもしれませんが、遊戯数学はこうやって楽しむものです。
で、完成したものがこちらです。
""が新しい演算を表す演算子です。
右辺の右上の"log₂"は、冪乗の逆演算である「対数」です。
簡単に言うと、足し算に対する引き算、掛け算に対する割り算みたいなものです。
計算過程
完成までの過程を説明する前に、「演算の性質」に名前を付けます。
- 交換法則:
- 結合法則:
- 分配法則:
また、足し算での「0」や掛け算での「1」のような、「演算しても変わらない数」をその演算の「単位元」と呼ぶことにします。
これらを使って今までの話を書き直すとこうなります。
美しくない!!
・・・という感じにになります。
「あれ?分配法則は?」と思った人もいるでしょう。
分配法則は複数の演算の間を結び付ける法則で、少しややこしいのであえて避けていました。
じゃあ、冪乗の場合分配法則は成り立つのか?
掛け算の場合とは少し違いますが、冪乗にも分配法則っぽい性質があります。
御覧の通り、冪乗と掛け算と足し算が全部混ざって超ややこしいです。
説明は省きますが、実は分配法則は掛け算と冪乗に「繰り返し」という性質を与えるカギとなっており、同時に冪乗の変則性を生み出す諸悪の根源なのです。
というわけで、美しい演算を作るにはここから変えていくと良さげです。
すみません、自分でもドン引きするほど前置きが長くなってしまいましたが、ここからようやく新しい演算の話に入ります。
まず、新しい演算が満たすべき性質を決めます。
先ほど言った通り分配法則のややこしさを解消するため、新演算と掛け算だけで分配法則を作ります。
単位元は一番「基礎」っぽい感じがするので、これも先に変えてしまいましょう。
さて性質が2個決まったわけですが、実はこの段階でほぼ完成です。
まず分配法則により、
が成り立ちます。
そして2は単位元なので、
となります。
結果だけまとめると、
となります。
ここで、と置くと、
と変形できます。
これをさっきのという式に代入します。
できた!!!!
なんと、ルールを2個決めただけで定義が完成してしまいました。
じゃあ交換法則と結合法則は?
結合法則はともかく、交換法則はどう見ても成り立たなさそうですね。
...
何という事でしょう、定義に入れていない交換法則と結合法則が自動的についてきたではありませんか!
失われた物
(中二病みたいな項目名だな…。)
ところで、数学的概念を拡張する際は何かしらの性質を失うことが多いです。
例えば「数」の概念を拡張したものとして、「複素数」「四元数」「八元数」というものがあります。
実数→複素数→四元数→八元数と拡張していくと、各段階で「大小関係」「交換法則」「結合法則」が失われることが知られています。
また今回の主題である「冪乗」も、掛け算を拡張するために交換法則と結合法則が犠牲になったと考えることができます。(なんで一気に2つ失ったのか、とかは聞かないでください)
では、新しい演算は何を代償として捧げたのでしょうか?
答えは以下の表を見るとわかります。
+₂ | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
2 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
3 | 1 | 3 | 5.7... | 9 | 12.8... | 17.1... | 21.8... | 27 | 32.5... |
4 | 1 | 4 | 9 | 16 | 25 | 36 | 49 | 64 | 81 |
5 | 1 | 5 | 12.8... | 25 | 41.9... | 64.0... | 91.6... | 125 | 164.3 |
6 | 1 | 6 | 17.1... | 36 | 64.0... | 102.6... | 152.9... | 216 | 292.8... |
7 | 1 | 7 | 21.8... | 49 | 91.6... | 152.9... | 235.7... | 343 | 477.4 |
8 | 1 | 8 | 27 | 64 | 125 | 216 | 343 | 512 | 729 |
9 | 1 | 9 | 32.5... | 81 | 164.3 | 292.8 | 477.4 | 729 | 1058.9... |
これは+₂版の「九九表」です。
整数と整数で計算しているのに、答えが整数にならない場合があるのです。
「整数と整数で計算すると整数になる」こと、これこそが+₂が支払った代償です。
…そういうことにしといてください。
余談
ここまで読んでいただいた方の中には、疑問に思っている人もいるでしょう。
「+₂の2って何?」と。
これは足し算を0番、掛け算を1番目として2番目という意味で付けました。
…0、1、2と来たら、3番目の存在って気になりませんか?
実は、3番目やそれ以降も定義可能です。
というわけで、3番目を定義します。
使用するのは2番のときと同じく単位元と分配法則だけ。
はい、できました。
+₂と同様、+₃も交換法則と結合法則が成り立ちます。
この後も+₄、+₅、+₆...と無限に続けられるのですが、キリがないので一般の場合の生成方法だけ書きます。
それでは、記事の最後に+₅の式を書いて終わりにしたいと思います。
それでは、さようなら。