偽計数学妨害罪

うるせぇ、こっちは遊びで数学やってんだよ

高周期ジュリア集合ランキングTOP10

どうも、最近このブログの運営方法について悩みつつ何もしていないチオールです。


「ふざけたギャグ記事」「そこそこ真面目な数学記事」「ほぼ自分専用のメモ書き」「日記」等がごちゃ混ぜになっている現状は自分も含めて誰も得しないし、数学記事の中でも読者に要求する知識レベルが全然統一されてないのでこのブログはクソです。


とりあえず今回は、なるべく少ない前提知識でジュリア集合の話をしたいと思います。


※そこそこ真面目な解説が多いですが、興味ない人は画像を流し見していってください。

ジュリア集合の説明

本題に入る前に、今回の主題であるジュリア集合の説明をします。

ジュリア集合と周期

  • 複素数z_{n+1}=z_n^2+c(c複素数)が無限大に発散しないような初期値の集合をz^2+cのジュリア集合と呼ぶ。
  • z_0=0z_{n+1}=z_n^2+ck周期の周期数列に収束するとき、kz^2+cのジュリア集合の周期とする。

※ジュリア集合の正式な定義は上記のものと異なりますが、面倒臭いのでいい加減なまま話を進めます。耐えられない人は一旦記憶を消去してから読んでください。


例えばc=-1z_0=0としてz_{n+1}=z_n^2+cの計算をすると以下のようになります。

  • z_1=0^2-1=-1
  • z_2=(-1)^2-1=0
  • z_3=0^2-1=-1
  • z_4=(-1)^2-1=0


この後も-1と0が交互に並び続け、無限大に発散することは無いので0はz^2-1のジュリア集合に含まれることがわかります。


一方でz_0=2とすると、2、3、8、63、3968、15745023・・・と際限なく増加していくので2はz^2-1のジュリア集合には含まれません。


複素平面上でz^2-1のジュリア集合に含まれる点をプロットすると、以下のようになります。

☝z^2-1のジュリア集合


また、z_0=0のときのz_nは0、-1、0、-1・・・という2周期の周期数列になったので、z^2-1のジュリア集合の周期は2になります。


なお、c=-1のときは0からダイレクトに周期数列に突入しましたが、この挙動はちょっと特殊で大抵のcでは周期数列にだんだん近づいていくような動きをします。


例えばz^2-0.2+0.7iのジュリア集合の周期は3で0.1275+0.1378i、-0.2027+0.7352i、-0.6994+0.4019iというサイクルに収束するのですが、z_nはサイクルを構成する3つの点に吸い寄せられるように振舞います。

☝c=-0.2+0.7iのときのz_nが3周期数列に近づいていく様子


さて、ここからが本題です。


z^2-1のジュリア集合は2周期、z^2-0.2+0.7iは3周期であることがわかりましたが、cの値によっては周期はもっと大きくなります。

☝周期の大きいパラメータ例


では、キリのいい値のうち最も周期が大きいcはどんな値でしょうか?


というわけで、キリのいいcについてz^2+cのジュリア集合の周期を総当たりで調べ、周期が大きかった値をランキング形式で紹介したいと思います。


なお、集計対象は具体的には以下の条件を満たす値としました。

  • 実部と虚部の小数点以下が2桁以下
  • 虚部は0以上(c=a+bic=a-biは同じ周期を持つので、虚部が負のケースは調べる必要が無い)
  • 実部は-2から1まで(この範囲外のジュリア集合は周期を持たない)

10位:-0.56+0.48i(36周期)


微細な枝状の構造が美しい-0.56+0.48iが、36周期で10位にランクイン。


上の画像は、ジュリア集合の外側を発散速度に応じて色を塗り、内側を収束速度で彩色したものです。


9位以降もこのようにフルカラーの画像を載せていきます。


また、サイクルは以下のようになっています。

☝z^2-0.56+0.48iの36周期軌道


これも9位以降でも載せていきます。


ちなみに、先程の説明に出てきた2~5周期のジュリア集合のカラー版は以下の通りです。


9位:-1.02+0.25i(38周期)

☝z^2-1.02+0.25iの38周期軌道


不気味な目玉状の模様を身に纏った-1.02+0.25iが、38周期で9位にランクイン。


このような模様は、z_nがサイクルの点に近づくスピードが遅いときに表れます。


例えばz^2+0.1+0.6iz^2+0.1+0.5iはどちらも1周期サイクル(=固定点)を持ち、z^2+0.1+0.6iの方には目玉状の模様が現れます。

☝z^2+0.1+0.6iとz^2+0.1+0.5iのジュリア集合


そして、z_nと固定点の距離を計算してみると、z^2+0.1+0.6iの方が明らかに固定点に近づくのが遅いのがわかります。

☝右は距離が急速に0に近づいているが、左は遅い


周期が2以上の時も同様に、サイクルを構成する各点に近づくスピードによって模様が変わります。

8位:-1.23+0.1i(46周期)

☝z^2-1.23+0.1iの46周期軌道


9位以下を引き離して(?)、-1.23+0.1iが46周期で8位となりました。

7位:0.38+0.27i(55周期)

☝z^2+0.38+0.27iの55周期軌道


このジュリア集合をよく見ると、2種類の「枝分かれ」があることがわかります。

☝5又と11又の、2種類の枝分かれ

※この記事ではn個のものが1点から出ている状態を「n又」と表現します。受け入れられない人は画面奥から補助線でも引いて正気を保ってください。


実はこのジュリア集合のサイクルは「5個の点からなるグループが、11個集まっている」というような形になっており、z_nは11個のグループの中を5周することで計55個の点を巡回します。

☝サイクルの位置関係

※右の画像は左の図に合わせて上下を反転してあります。


以降、このような「2種類の枝分かれを持ち、m個の点からなるグループがn個集まったm×n周期のサイクルを持つジュリア集合」をレベル2のジュリア集合と呼ぶことにします。

6位:-0.65+0.44i(70周期)

☝z^2-0.65+0.44iの70周期軌道


このジュリア集合は枝分かれが3種類ある、いわばレベル3のジュリア集合というべきものです。


実はレベルという概念は、マンデルブロ集合を観察することでわかりやすく特徴づけることができます。


マンデルブロ集合は「z_0=0,z_{n+1}=z_n^2+cが発散しないcの集合」で、ジュリア集合がz_0を動かすのに対し定数cの方を動かすという点が異なります。

マンデルブロ集合(y=-2i~2i,x=-2~2)


以下の記事で触れている通り、ジュリア集合とマンデルブロ集合の間には深い関係があります。


hassium277.hatenablog.com


というわけで、マンデルブロ集合上でc=-0.65+0.44iの位置を観察してみましょう。

マンデルブロ集合のc=-0.65+0.44i付近


左下で赤線が交差している所が-0.65+0.44iです。


-0.65+0.44iは小さな円状の領域(真円ではないらしいです)の中にあり、その円状領域はもっと大きな円状の領域に接しており、その円状領域ももっと大きな円状の領域に接しており、その円状領域は右上で見切れている領域に接しています。


この見切れている領域は実はマンデルブロ集合の中央にあるハート形の領域(「カージオイド」という図形らしいです)で、つまり-0.65+0.44iは中心カージオイドから隣接する領域へ3回移動して辿り着ける領域の中にあるという事がわかります。


ここで、マンデルブロ集合を構成する領域に対して以下のように「レベル」を定義します。

マンデルブロ集合のレベル

  • 中心カージオイドをレベル0の領域とする
  • レベルnの領域に隣接する(レベルn-1でない)領域をレベルn+1とする。
マンデルブロ集合全体と-0.65+0.44i周辺におけるレベルの値の例


ついでに、ある領域に隣接するより高レベルの領域を子領域、低レベルの領域を親領域と呼ぶことにします。


例えばあるレベル1の領域に接しているレベル2の領域はその領域の子領域で、レベル0の領域は親領域になります。(レベル0領域、つまり中心カージオイドは親領域を持ちません)


そして、ジュリア集合のレベルをcマンデルブロ集合上でレベルnの領域に属しているとき、z^2+cのジュリア集合のレベルはnである」と再定義します。


仕組みは全く分かりませんが、どうもこの定義によるレベルの値は先述の「枝分かれの種類数によるレベル」と一致するらしく、なおかつわかりやすくて曖昧さが低減されているかと思います。(数学的に厳密な定義になったという訳ではなく、あくまでも感覚的にわかりやすくなったというだけです)

5位:-0.03+0.73i、-1.01+0.25i(78周期)

☝z^2-0.03+0.73iとz^2-1.01+0.25iの78周期軌道


78周期の-0.03+0.73iと-1.01+0.25iが、まさかの同率で5位にランクイン。


周期はどちらも78ですが、-0.03+0.73iの方はレベル3、-1.01+0.25iはレベル2です。


先程のレベルに関する説明ではマンデルブロ集合の円状領域の話が出てきましたが、実はあの話はジュリア集合の周期とも関わっています。


マンデルブロ集合の円状領域とジュリア集合のレベルについて、「c_1c_2が同じ円状領域の中にあるなら、z^2+c_1のジュリア集合とz^2+c_2のジュリア集合のレベルは等しい」という関係があります。


ジュリア集合のレベルは「どの円状領域に属するか」で定義されているのでこれが成り立つのは当たり前なのですが、不思議なことにジュリア集合の周期に対しても同じことが成り立つ、つまりc_1c_2が同じ円状領域の中にあるなら、z^2+c_1のジュリア集合とz^2+c_2のジュリア集合の周期は等しい」という関係が成り立つらしいです。


なので円状領域1つずつに対してレベルの値を割り当てたように、周期の値も円状領域に対応付けることができます。


実際に、-0.03+0.73iの周辺の領域の周期を調べると以下のようになっていました。

☝-003+0.73i周辺の周期(中央で赤線が交差している位置が-0.03+0.73i)


-0.03+0.73iが属する78周期の領域の親領域は39周期で、その39周期領域の親領域は3周期になっています。


この78、39、3という値には、以下のような関係があります。

  • 78は39の倍数(39×2)
  • 39は3の倍数(3×13)

この他の場所を観察すると、同様にn周期の領域の子領域の周期がnの倍数になっている」という現象が起きていることがわかります。


この性質により、ある領域の周期をその親領域の周期で割った値(周期因子と呼ぶことにします)というものを考えることができます。

☝-0.03+0.73i周辺の周期因子

※左側の大きな領域は中心カージオイドと接しており、中心カージオイドの周期因子は1とします。


周期因子を使うと、ジュリア集合の周期はcが属する領域の周期因子、その親領域の周期因子、そのさらに親の周期因子、・・・を全て掛け合わせたものとして計算できます。


例えば-0.03+0.73iの場合は-003+0.73iが属する領域の周期因子は2、その親領域の周期因子は13、その親領域の周期因子は3、その親領域(=中心カージオイド)の周期因子は1で、2×13×3×1は78となりジュリア集合の周期と一致します。


そして、実はこの2、13、3という3つの数は、ジュリア集合の枝分かれの分岐数とも一致しています。

☝z^2-0.03+0.73iのジュリア集合には2又、13又、3又の分岐がある


さて、同じく78周期の-1.01+0.25iはどうなっているかというと、まず周期因子は以下のようになっています。



※上側の大きい領域は中心カージオイドと接しています。


そして、ジュリア集合の枝分かれは2又と39又で、やはり周期因子の組み合わせと一致しています。



不思議ですね。

3位:0.24+0.51i(79周期)

☝z^2+0.24+0.51iの79周期軌道


枝分かれが多すぎてだいぶ禍々しい0.24+0.51iが、79周期で3位にランクイン。


レベル2・3の選手が順位争いを繰り広げる中、まさかのレベル1が登場しました。


ちなみに、逆にレベルが一番高くなるパラメータはどれかと調べてみたところ、-1.4がレベル5になることがわかりました。

☝z^2-1.4(レベル5)


こちらの周期は2×2×2×2×2=32で、残念ながらTOP10には入りませんでした。

2位:-0.51+0.51i(101周期)

☝z^2-0.51+0.51iの101周期軌道


3位に続いてレベル1の-0.51+0.51iが、101周期で2位にランクイン。


ついに100周期の大台を突破しました。

1位:-0.17+0.66i(117周期)

☝z^2-0.17+0.66iの117周期軌道


栄えある第1位に輝いたのは、117周期の-0.17+0.66i。


TOP3に入った途端急にレベル1の猛攻が始まりましたが、1位の座をつかんだのはやはり下位から実績を積み上げてきたレベル3のジュリア集合となりました。


ちなみに、今までは周期の値はz_nを実際に計算することで算出していましたが、数値計算に頼らず厳密に求めるには以下のような方法があるそうです。(原理は知りません)


(1) z_0=xと置き、z_kxの関数として表す。

(2) z_k=xxについて解く。(得られた解をx_1,x_2,x_3...とする)

(3) z_kxについて1回微分する。(得られた導関数f(x)とする)

(4) f(x_1),f(x_2),f(x_3)...の中に絶対値が1以下の値があれば、z^2+cの周期はkの約数である。


例えばz^2-0.9の周期が2であることは以下のように確かめられるようです。


(1) z_0=xと置くと、z_2=x^4-1.8x^2+1.71となる。

(2) x^4-1.8x^2+1.71=xxについて解くと、x=\frac{1±\sqrt{4.6}}{2},\frac{-1±\sqrt{0.6}}{2}という4つの解が得られる。

(3) z_2xについて微分すると、4x^3-3.6xとなる。

(4) 4x^3-3.6xに(2)で得られた解を代入すると、x=\frac{-1±\sqrt{0.6}}{2}のときに絶対値が0.4になるので、z^2-0.9のジュリア集合の周期は2の約数であることがわかる。(1周期でないことを確かめれば2周期であることが確定する)


この方法では、k周期であることを確認するためには2^k次方程式を解く必要があります。


よって、z^2-0.66+0.17iの周期が117であることを確認するには16615349947311448411 2975882535043072(千六百六十一溝五千三百四十九穣九千四百七十三𥝱千百四十四垓八千四百十一京二千九百七十五兆八千八百二十五億三千五百四万三千七十二)次方程式を解く必要があります。


暇な人はぜひ挑戦してみてください。

余談

隠しサイクル

1位の-0.66+0.17iの解説で触れた「周期の計算方法」の前半の部分は、実はk周期サイクルを構成する点(の候補)を具体的に求める手順になっています。


例えばc=-0.9のときに求めた解の一つであるx=\frac{-1+\sqrt{0.6}}{2}という値を実際にz_0として_nを計算してみると、以下のように実際に2周期のサイクルになっていることがわかります。

  • z_0=\frac{-1+\sqrt{0.6}}{2}
  • z_1=\left(\frac{-1+\sqrt{0.6}}{2}\right)^2-0.9=\frac{-1-\sqrt{0.6}}{2}
  • z_1=\left(\frac{-1-\sqrt{0.6}}{2}\right)^2-0.9=\frac{1-\sqrt{0.6}}{2}


では、周期が2ではないジュリア集合に対して同じ計算を行った場合、得られる値にはどんな意味があるのでしょうか?


例えば、3周期であるz^2-0.2+0.7iに対して同様な計算を行うと、以下のような1周期と2周期のサイクルが求まります。

  • 1周期:\frac{1}{2}\left(1+\sqrt{\frac{1.8+\sqrt{11.08}}{2}}-\sqrt{\frac{-1.8+\sqrt{11.08}}{2}}i\right)
  • 1周期:\frac{1}{2}\left(1-\sqrt{\frac{1.8+\sqrt{11.08}}{2}}+\sqrt{\frac{-1.8+\sqrt{11.08}}{2}}i\right)
  • 2周期:\frac{1}{2}\left(-1+\sqrt{\frac{-2.2+\sqrt{12.68}}{2}}-\sqrt{\frac{2.2+\sqrt{12.68}}{2}}i\right),\frac{1}{2}\left(-1-\sqrt{\frac{-2.2+\sqrt{12.68}}{2}}+\sqrt{\frac{2.2+\sqrt{12.68}}{2}}i\right)
☝2個の固定点(赤)と2周期軌道(青)


これらの隠しサイクル(?)は、z^2-0.2+0.7iのジュリア集合本来の3周期サイクルとは異なった性質を持ちます。


まず、3周期サイクルはz^2-0.2+0.7iのジュリア集合の内側にある点ならどこからでも到達できます。

☝いろいろな初期値が3周期サイクルに近づいていく様子


また、サイクルを構成する点から少しずれた位置にある点は、サイクルに吸い込まれるように収束していきます。(吸引的というそうです)


一方で、隠しサイクルの方に収束する初期値はジュリア集合の境界線上にまばらに存在するのみで、またサイクルを構成する点からほんの少しでも離れた点はサイクルからだんだん離れていってしまいます。

☝2周期サイクルからほんのわずかに離れた点が、サイクルから引き離されて3周期サイクルに吸い込まれる様子


この記事の冒頭で、ジュリア集合の定義をいい加減に説明したことを覚えているでしょうか?


どうやらジュリア集合の正式な定義は「z_nが発散しない初期値の集合」ではなく、隠しサイクルやそこに収束する点のような「値がほんの少しでもズレると全然違う動きになるような点」の集合っぽいです。


なお、今の私が参照できる資料はwikipediaをはじめとしたネットに転がってるものだけで、その内容も十分理解できていない(wikipediaの説明には「非正規族」とか「コンパクト開位相」とかの難しそうな概念がたくさん出てきます)のであってるかどうかは一切保証できません。


ja.wikipedia.org
※ジュリア集合の正式な定義について触れましたが、この後の話はいい加減な定義に戻して進めます。

例外

この記事ではジュリア集合の「周期」という値に注目し、詳しく解説するために「レベル」という値を導入しました。


しかし、この2つの値は実は全てのジュリア集合に対して定義できるわけではありません。


というわけで、周期とレベルが定義できていない例外的ケースをいくつか紹介します。

外側
周期 なし
レベル 未定義
☝z^2+0.4+0.2iのジュリア集合


cマンデルブロ集合の外側にある場合、z_nは発散してしまうのでz^2+cのジュリア集合は周期を持ちません。

マンデルブロ集合のc=0.4+0.2i付近


こういった場合のジュリア集合の見た目は今まで紹介してきたものと大きく異なりますが、これはこれで独特の美しさがあります。

☝c=-0.75+0.1i、0.34+0.07i、-0.1+0.65i
極限
周期 \infty
レベル \infty


レベル1、レベル2、レベル3・・・と円状領域を無限に辿っていった極限は、「レベル\infty」とでもいうべき特徴を持った値になります。


例えば実軸の負の方向に向かって周期因子が2である円状領域をひたすら辿っていくと、cは約-1.401に収束するようです。

マンデルブロ集合のc=-1.401付近


この点に対応するジュリア集合は、2×2×2×・・・の極限である無限大の周期を持つと思われます。


なお、今回のランキングの集計対象である小数点以下2桁の値の中には、このケースに該当するものはありませんでした。

飛び地
周期 有限値
レベル 未定義
☝z^2-1.75+0.01iのジュリア集合(12周期)
  • 1.401付近のレベル無限大の点からさらに左方向を見ると、マンデルブロ集合本体(?)にそっくりな小さな図形が見つかります。
マンデルブロ集合の左端の方


また、他の円状領域の周りにある枝を観察してみると飛び地状の領域があります。

☝-0.1+i付近


cがこういった領域の中にある場合、マンデルブロ集合の本体の場合と同様にz^2+cのジュリア集合は有限の周期を持ちます。


ただし、中心カージオイドから円状領域を辿っていける位置ではないため、「周期はあるのにレベルは定義できない」という一見奇妙な性質を持つことになります。


ちなみに、飛び地も本体と同様に円状領域とカージオイド(のような領域)でできており、本体と同様に周期因子を持ちます。

☝-1.75付近にある飛び地の周期因子


どうやら飛び地の周期因子は、中心カージオイドが1より大きい値を持ち、周りの円状領域は本体と全く同じ値になるようです。

☝本体の周期因子


今回のランキングの集計対象の中では、以下の値がこのケースに該当していました。

  • -0.16+1.03i(4周期)
  • -0.31+0.65i(28周期)
  • -1.48(12周期)
  • -1.63(10周期)
  • -1.75(3周期)
  • -1.75+0.01i(12周期)
  • -1.76(3周期)
  • -1.76+0.01i(3周期)
  • -1.77(6周期)
  • -1.81(8周期)
  • -1.87(8周期)
周期 不明
レベル 未定義
☝z^2-1.41のジュリア集合


マンデルブロ集合の本体と飛び地を繋ぐ線状の部分を拡大すると、ものすごく小さい飛び地が見つかることがあります。

☝c=-1.7397付近の小さい飛び地(20000倍拡大)


しかし、場所によってはどれだけ拡大しても飛び地に辿り着かないことがあります。


ランキングの集計対象の中では、以下の54個が該当しました。

  • i
  • -1.41
  • -1.42
  • -1.43
  • -1.44
  • -1.45
  • -1.46
  • -1.47
  • -1.49
  • -1.5
  • -1.51
  • -1.52
  • -1.53
  • -1.54
  • -1.55
  • -1.56
  • -1.57
  • -1.58
  • -1.59
  • -1.6
  • -1.61
  • -1.62
  • -1.64
  • -1.65
  • -1.66
  • -1.67
  • -1.68
  • -1.69
  • -1.7
  • -1.71
  • -1.72
  • -1.73
  • -1.74
  • -1.78
  • -1.79
  • -1.8
  • -1.82
  • -1.83
  • -1.84
  • -1.85
  • -1.86
  • -1.88
  • -1.89
  • -1.9
  • -1.91
  • -1.92
  • -1.93
  • -1.94
  • -1.95
  • -1.96
  • -1.97
  • -1.98
  • -1.99
  • -2


このうち、c=-1.5としてz_nを縦軸、nを横軸としてプロットすると以下のようになります。



一定の範囲内に不規則に点が散らばっています。


一方で、飛び地の中にあるc=-1.75の場合はこうなります。



z_nが周期数列になるということは同じ値が繰り返されるということなので、このように周期と同じ本数(c=-1.75のときは3)の横線が現れるというわけです。


ではc=-1.5のように不規則になるのは何なのかというと、周期数列に収束していかないか、もしくは見た目で判別できない程周期が長いかのどちらかです。


ということはどっちにしろTOP10入りは確実なのですが、こんなのを入れても面白くないので周期\inftyの疑いがあるものはランキングでは除外しました。


なお、先程の54個のうちiと-2の2個は特殊で、「枝の上の飛び地が無いところの値」という条件を満たすのにz_nは周期数列になります。

  • c=-2:0、-2、2、2
  • c=i:0、i、-1+i、-i


Wikipediaによると、この2つの値はMisiurewicz pointと呼ばれるグループに属するらしいです。


en.wikipedia.org


Misiurewicz pointは、今回のz_0=0,z_{n+1}=z_n^2+cという数列に限って言えば以下のような性質を満たすcのことだそうです。

  • z_nがダイレクトに周期数列に突入する
  • 周期数列に0が含まれない(初期値に戻ってこない)


例えば最初の方に紹介したc=-1では、以下のように0から直接周期数列に突入していました。

  • c=-1:0、-1、0


しかし、この場合は0に戻ってくるので、-1はMisiurewicz pointではありません。


マンデルブロ集合上では、Misiurewicz pointは枝の先端や枝の根元などにあるようです。

接点
周期 有限値
レベル 未定義/有限値
☝z^2-1+0.25iのジュリア集合(2周期)


以下の4つの値は、2つの円状領域のちょうど境界に位置しています。

  • 0.25+0.5i(1周期)
  • -0.75(1周期)
  • -1+0.25i(2周期)
  • -1.25(2周期)
マンデルブロ集合のc=-1+0.25i付近


この場合はcは特定の円状領域の中にあるわけではないのでレベルは未定義ですが、定義を修正することで有限のレベル値を割り当てることができます。(今回は定義せずにスルーすることにします)


cがレベルmとレベルm+1の領域の間にあるとき、z^2+cのジュリア集合は以下のような特徴を持つようです。

  • 枝分かれはm+1種類
  • 周期はレベルm相当
  • 収束がめちゃくちゃ遅い


例えばc=-1+0.25i(m=1、周期因子は2と4)の場合は、

  • 枝分かれは2又と4又の2種類
  • 周期は2
  • 収束が遅すぎて彩色できてない白い領域がある


という感じです。

☝z^2-1+0.25iのジュリア集合(再掲)


レベル0と1の間にあるようなcは、以下のように求めることができるようです。


(1) d=\text{cos}(r\pi)+i\text{sin}(r\pi)(r有理数)とする
(2) c=\frac{d}{2}-\frac{d^2}{4}とすると、cはレベル0領域とレベル1領域の間の値になる


例えば0.25+0.5iと-0.75は以下のように生成できます。

  • r=\frac{1}{2}d=ic=0.25+0.5i
  • r=1d=-1c=-0.75


ちなみにr=0の場合はc=0.25になりますが、この場合は円状領域の間ではないもののレベル0領域の境界上の点(カージオイドの割れ目の位置)にはなります。



また、周期因子が2であるレベル1領域とレベル2領域の間の値は、c=\frac{d}{4}-1として生成できます。

  • r=\frac{1}{2}d=ic=-1+0.25i
  • r=1d=-1c=-1.25
ジーゲル円板
周期 \infty
レベル 未定義/有限値
☝z^2-0.47+0.54iの∞周期軌道


以下の8つの値は、マンデルブロ集合の境界上に位置しています。

  • 0.33+0.06i
  • 0.37+0.16i
  • -0.23+0.64i
  • -0.47+0.54i
  • -0.8+0.15i
  • -0.85+0.2i
  • -1.15+0.2i
  • -1.2+0.15i


ただし、先程紹介したケースとは異なり円状領域との接点にはなっていないようです。

マンデルブロ集合のc=-0.47+0.54i付近


この場合のz_nは閉曲線上を非周期的に回る軌道に収束するのですが、どうやら初期値によって違う軌道になるようです。

☝外側から順にz0=0、0.2i、-0.4+0.2iのときの軌道


非周期的ということは\infty周期としてランキングに入れることもできたのですが、こちらも面白くないので除外しました。


wikipedia曰く、このケースで周期軌道が存在する領域のことをジーゲル円板というそうです。(Misiurewicz pointと異なり、cの値につけられた名前ではなくジュリア集合の部分構造を指す名前らしいです)


ja.wikipedia.org


また、このケースの値もc=\frac{d}{2}-\frac{d^2}{4}c=\frac{d}{4}-1という式から生成できます。


例えばd=-0.8+0.6iとすると先程のc=-0.47+0.54iという値が生成できますが、このときのdd=\text{cos}(r\pi)+i\text{sin}(r\pi)という形で表すとr無理数になります。


どうやらr有理数のときは円状領域の接点の値になり、無理数の時はジーゲル円板ができる値になるらしいです。(wikipedia曰く、無理数なら必ずジーゲル円板ができると証明されているわけではないようです)

最後に

今回はz^2+cで小数点以下2桁という範囲でのランキングとしましたが、違う関数や違う条件で同じことをするとまた違った面白さがあります。


というわけで、気が向いたらいつかまた同じような記事を書きたいと思います。


それではさようなら。