こんにちは、数学好きの108Hassiumです。
「数学好き」というと、「数学が得意」とか「研究者?」とか勘違いされることがたまにありますが、私は別に特技を自慢したいわけでも最先端の内容を追っているわけでもありません。
道なき道を行く数学者を「登山家」に例えるならば、私はただの散歩好きのようなもの。
ただ舗装されきった道を歩き回り、「ここにはこんなものがあるんだ」とか「ここはこことつながってるんだ」みたいな楽しみ方をしています。
しかし、そんな私でもいつの間にか見知らぬ場所を歩いていたり、時には未開の地へと続く道へ足を踏み入れてしまうことがあります。
というわけで、「簡単そうな問題について考えてたらめっちゃ難しそうな話になった」という体験談を3つ紹介します。
連分数
皆さんは「連分数」というものをご存知でしょうか。
こういうやつです。
要するに分数の中に分数が入ったやつです。
ちなみに、上の例の式はを表しています。
式を途中で切って計算してみると、確かにに近づいていきます。
この例からわかる通り、連分数は単純な式が意外な値に収束することがよくあります。
そこで、私はこんなことを考えました。
「ってどんな値?」
先程の例では左端の数は1,1,1,1...と一定でしたが、今度は1,2,3,4...と増えていきます。
さっきやったように、式を途中で切って近似値を求めます。
1.4331ぐらいの値に収束するようです。
ではこれがどんな値なのか考えましょう。
まずは先ほどのという式がどうやってできたか説明します。
と置くと、
が成り立ちます。
この式を整理するととなり、2次方程式の解の公式を使うと
となります。
は正の値なので
となります。
では、この手順を使っての正体を暴きましょう。
まずと置くと、
...?
...無理じゃん。
あのやり方は左端の列に周期性がある場合しか使えないようです。
というわけで、手も足も出ないので適当なワードでググります。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12117863097?__ysp=6YCj5YiG5pWw
ありました。全く同じことを考える人っているんですね。
しかも都合のいいことに「解決済み」マークがついています。
どれどれ、ベストアンサーは...
...?
変形ベッセル関数?
微分方程式???
何?????
なんかすっげぇ式が出てきましたが、結局「1.4331...がどういう値か」という問いに対して自分の理解できる範囲での結論は得られませんでした。
算術幾何平均
あれは確か、焼き肉屋での食事中。
ふと、こんな考えが頭に浮かびました。
「、
とすると任意の初期値
、
に対して収束するのでは?」
...すみません、別に「難しいこと言って天才っぽく思われたい」とかそういうのじゃないんです。
「平均」ってご存知ですよね?
大抵の人は平均といえば「データを全部足して、データの個数で割った値」を思い浮かべると思いますが、その値には実は「算術平均」という名前がついています。
そして、わざわざ名前がついているということから想像できる通り、算術平均以外の平均値の定義が存在します。
例えば、「幾何平均」というのは以下の式で定義されます。
例えばの幾何平均は
です。
さて、平均といえば「真ん中ぐらいの値」というイメージもあると思います。
実際、データが2つの場合の算術平均は「2数のちょうど真ん中」になりますが、幾何平均も2数の間の値になります。
2数の間という事は、と
の差は、
と
の差より小さくなるはずです。
ということは、と
の算術平均と幾何平均を新たな2数として再度2つの平均値を求めて、という操作を繰り返すと、2数はある値に近づいていくように思えます。
これを数式で表すとこうなります。
「、
とすると任意の初期値
、
に対して収束するのでは?」
帰宅した私は、さっそく計算を始めました。
と
が同じ値に近づいていってるように見えます。
(脳内の「1.4ぐらいの数」のフォルダがやたら充実していく...)
では、この値は何でしょうか?
これを思いついてから数週間後、偶然にもと
の極限値が「算術幾何平均」と呼ばれていることを知りました。
というわけで、ググります。
ありました。ウィキペディアにそのまんまの名前のページがあるという事は、結構有名な概念なんでしょうか。
どれどれ...
???
楕円積分?
求まらない?!?!?!?!?!
「平均をとり続ける」という簡単な操作をしてただけなのに、突然「不可能」を叩きつけられてしまいました。
対数積分
さっき出てきた「積分」という単語、実は高校数学で出てきます。
詳しい話は省きますが、積分は面積の計算に使えます。
具体的には、という式は「
のグラフの
から
までの部分と
軸の間の領域の面積」を表します。
青色に塗られた領域の面積がの値です。
ウィキペディアの算術幾何平均のページに書いてあったというのも、何かの面積を表していると考えることができます。(なんで面積の式が出てくるのかは謎ですが。)
高校で積分を習った私は、いろんな関数のグラフの下の部分の面積を求めまくって遊びました。
そんな中で、という式を思いつきました。
に相当するのは
というそこそこシンプルな関数ですが、計算してみるとぐちゃぐちゃになって上手くいきませんでした。
結局どうにもできずにその時は諦めたのですが、後になってからに「対数積分」という名前があることを知りました。
というわけで、ググります。
ありました。ウィキペディアにそのまんまの名前のページがあるという事は、結構有名な概念なんでしょうか。
どれどれ...
...?
素数定理?
ミレニアム懸賞問題???
100万ドルの懸賞金?!?!?!
高校レベルの簡単そうな疑問の答えが知りたかっただけなのに、全然関係なさそうな素数の話が始まり、最終的に賞金首の超難問が出現してしまいました。
元凶?
実はこの3つのエピソードには共通するキーワードがあります。
それは、「積分」です。
高校で積分を習ったと言いましたが、高校で習うような全ての関数(「初等関数」と呼ぶらしいです)の積分方法を習ったわけではありません。
どうやら初等関数の積分結果は必ずしも初等関数で表せるわけではなく、算術幾何平均と対数積分の話が「わからん」で終わったのはと
が積分できない関数だったからです。(なんで対数積分の話が素数や懸賞問題につながるかのはわかりません。)
連分数の話には積分は出てきませんでしたが、代わりに「微分方程式」という単語が出てきました。
詳細は省きますが、微分方程式を解くには積分の計算が必須で、そうなると「積分できないせいで解けない微分方程式」も出てきます。
つまり、連分数の話が解決できなかったのもに、積分の難しさが関わっている(かもしれない)というわけです。
全ての元凶が判明したところで、この話は終わりたいと思います。
それでは、さようなら。